近年、「222nm Far UVC(遠紫外線)」が注目を集めています。
ウイルスや細菌を効率よく殺菌でき、しかも人がいる環境でも使える可能性がある――そんなニュースを耳にした方もいるのではないでしょうか。
では、このFar UVCを 「のどの殺菌治療」 に応用できるのでしょうか?
目次
1. Far UVC(222nm)とは?
- 紫外線は波長によってUVA、UVB、UVCに分類されます。
- 222nm Far UVC はUVCの一部で、DNAやRNAを破壊する強い殺菌効果を持ちます。
- 200〜280nmのUVCは強力な殺菌光として知られていますが、従来の254nmなどは皮膚や目を傷めるため、人のいる環境で使うのは危険でした。
- そこで登場したのが「222nm」。皮膚や角膜のごく表面で吸収され、深部まで届きにくい性質があるため、安全性が期待されています。

2. 空気殺菌としての実用化
実際に、222nm Far UVCは以下のような場面で研究・導入が進んでいます。
- 病院の待合室や手術室の空気殺菌
- 空港や駅など人の多い公共空間
- 学校やオフィスの空気清浄補助
インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスを短時間で不活化できるという実験結果も報告されています。

3. のどへの直接応用は可能か?
ここで本題です。
「のどの殺菌治療」にFar UVCを使えるか?
結論から言うと、現時点では不可能・危険と考えられています。
理由は以下の通りです。
- 粘膜には防御層がない
- 皮膚には角質層があり、222nmの光はそこで止まります。
- しかし、のどや気道の粘膜には角質がなく、DNAが直接ダメージを受けやすい。
- 長期的な安全性データが不足
- 数分〜数時間の短期照射での安全性はある程度報告されていますが、
医療治療レベルで繰り返し粘膜に照射した場合のデータはありません。
- 数分〜数時間の短期照射での安全性はある程度報告されていますが、
- 臨床試験が存在しない
- 現在の臨床応用は「空気殺菌」や「表面殺菌」止まりで、
のどの治療として使ったという報告は見当たりません。
- 現在の臨床応用は「空気殺菌」や「表面殺菌」止まりで、

4. 今後の可能性
ただし、将来的に研究が進めば、
- 照射量を厳密にコントロールした「医療用デバイス」
- 内視鏡などを利用した局所的な殺菌治療
といった応用が登場する可能性はあります。
現段階では「のどに直接当てるのは危険」ですが、
空気中の飛沫やエアロゾルを殺菌して、間接的にのどの感染リスクを下げる という形なら、すでに実用が始まっています。

まとめ
- 222nm Far UVCは強力な殺菌力を持つ
- 空気殺菌用途では実用化が進んでいる
- のどの直接的な殺菌治療には、現時点では使えない(安全性未確立)
つまり、今は「のどの殺菌治療」に使うものではなく、
感染症対策の補助(空気清浄・環境殺菌)」として期待される技術といえます。

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